糖尿病網膜症とは
- 糖尿病網膜症は、糖尿病の患者様が発症する合併症（ある病気によって引き起こされる別の病気）のひとつです。そもそも糖尿病とは、慢性的に血糖値（血液中に含まれるブドウ糖の濃度）が高くなっている状態で、発症しても初期の段階では気づきにくいとされている病気です。そのため病状を進行させやすい特徴があるわけですが、血糖値が高くなると血液はドロドロした状態になりやすく、これが血液の流れを悪くさせ、さらに放置が続くと血管が詰まるようになります。とくに起きやすいのが細小血管で、これらがたくさん集まっている網膜、腎臓、神経では血管障害がみられやすいことから、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害は糖尿病三大合併症とも呼ばれています。
- なお糖尿病網膜症は、糖尿病を発症してすぐに併発することはありません。糖尿病に罹患した状態で、これといった治療もせずに10年程度放置が続くと約半数以上の方が発症するようになります。糖尿病と同様に初期に自覚症状がみられることは、ほぼありません。その後、先にも述べたように網膜の細小血管が高血糖状態によって損傷を受け、同血管が詰まる、あるいは出血するといった状態になると、視界がかすむような見え方がするほか、目の中に虫が入っているように見える、視力低下などの症状が見受けられるようになりますが、このような症状が現れるようになるとかなり症状が進んでいる状態と言えます。
検査について
糖尿病と診断された患者様は、眼症状の有無に関わらず、定期的に眼科で検査を受けるようにしてください。眼底検査（網膜の状態や網膜の血管を調べる）、蛍光眼底造影検査（糖尿病網膜症の進行状態を確認する）、光干渉断層計（OCT：糖尿病黄斑症（糖尿病黄斑浮腫）が疑われる場合に行う）などを行うことで診断をつけていきます。
治療について
- 検査の結果、糖尿病網膜症と診断されると治療が行われることになりますが、その内容は進行の程度（初期、中期、進行期）によって異なります。
- 糖尿病網膜症の初期（単純網膜症）の場合は、網膜に浮腫や出血がみられている状態ですが、黄斑部（網膜の中心部）にまで病変が現れていないので自覚症状が出ることはありません。この場合は、糖尿病網膜症に関する治療をすることはありません。糖尿病の治療で行っている生活習慣の改善（食事療法、運動療法）や薬物療法（経口血糖降下薬）による血糖値のコントロールによる治療が中心となります。
- また糖尿病網膜症の中期（増殖前網膜症）は、網膜に虚血状態がみられていて、網膜内の細小血管に何らかの異常がみられる、白斑（軟性、硬性）などが眼底検査で確認されますが、この場合でも自覚症状が出ない場合もあります。ただ、網膜の血流が途絶えていると、そこから新生血管（脆くて、出血しやすい）が発生しますので、それを予防、あるいは発生している際に、その部分をレーザーで焼き固めるレーザー治療（光凝固療法）を行うようにします。
- さらに糖尿病網膜症の進行期（増殖網膜症）は、新生血管が網膜内でたくさん発生している状態で、硝子体にまで新生血管が伸び、それによって様々な症状（目がかすむ、飛蚊症、視力低下、視野障害 など）が起きている状態です。この場合は、牽引性網膜剥離が起きやすく、黄斑部にこれが及ぶと失明に至ることもあります。治療法としては、血糖のコントロールや光凝固療法のほか、硝子体手術を行うこともあります。