日帰り白内障手術とは
当院は白内障の患者様で、手術が必要と医師が判断した場合は、日帰りによる手術を行っています。患者様によっては、入院しての手術が必要というケースもあります。この場合は、当院と病診提携している総合病院をご紹介いたします。
白内障とは
白内障とは、目の中の水晶体というカメラで例えるとレンズにあたる部分が白く濁ってきてものが見えなくなる病気です。
昔は「白そこひ」とも呼ばれ、失明率の高い病気でした。
原因と種類について
白内障の原因はひとつではなく、様々な要因がありますが、その中で最も多いとされているのが加齢白内障です。この場合は年齢が高くなればなるほど発症率が上がるわけですが、70歳を過ぎると5人に4人の割合で白内障を発症すると言われています。また、加齢以外では、別の眼疾患(ぶどう膜炎、緑内障、網膜疾患 など)がきかけとなって起きる併発白内障をはじめ、アトピー性皮膚炎や糖尿病など全身に影響する疾患によって引き起こされるケース、また薬剤(ステロイドの長期投与)、眼球打撲などによる外傷、先天的な原因(先天性風疹症候群 など)といったことで発症することもあります。
検査について
患者様にみられる症状や訴えなどから白内障が疑われると診断をつけるための検査を行っていきます。具体的には、視力検査で実際の視力や見え方を確認し、細隙灯顕微鏡検査(網膜に向かって斜めに光を照射し、水晶体の混濁の有無などを調べる)によって、濁り具合をみていきます。その際に水晶体の混濁が確認されると白内障と診断されます。
症状と治療について
- よく見受けられる症状は、目がかすんで見える、明るい場所では異常にまぶしく感じてしまう、物が二重にも三重にも見えてしまう(複視)などです。
- 白内障によって目が見えにくいとされる状態を回復させるには、現時点では手術療法のみです。ただ、水晶体の混濁が軽度で、日常生活にそれほど支障をきたしていなければ、点眼による薬物療法が行われます。しかしこれは濁りを解消させるものではなく、病状の進行を遅らせるために行われるためのものです。そのため病状が進行した場合は、手術療法が選択されます。
手術の時期
物が見えにくくなり、これでは日常生活に困ると思った時が手術の時期です。
例えば、自動車の運転をする人は、免許更新が出来なくなれば手術しなければなりませんし、細かい文字が読めなくなったら、手術を考えてみる時期となります。瞳が白くなってしまうまで手術しないでおくと、他の病気(ぶどう膜炎や緑内障)が起こることがあります。また、眼底の様子が分からないので眼の内部の病気になった時、手遅れになる心配があります。
手術の方法
手術をする場合、濁った水晶体を取り除き、その代わりとなる人工の水晶体(眼内レンズ)を挿入していくという内容になります。ただ一口に手術といっても入院か日帰りか、あるいは濁った水晶体を取り除く方法(嚢外摘出術、嚢内摘出術)もいくつかあるわけですが、当院では一般的に白内障手術でよく取り入れられている日帰りによる嚢外摘出術で、その中の水晶体乳化吸引術(PEA)を行っています。
水晶体乳化吸引術とは
水晶体乳化吸引術の大まかな内容ですが、まず同手術を行うにあたって点眼麻酔をしていきます(麻酔が切れることがないように手術中も足していきますので、痛みが出ることはありません)。その後、角膜を2mm~3mm程度切開していき、その隙間から超音波乳化吸引装置等を挿入して、超音波(チップ)の振動によって濁っている水晶体を粉砕していきます。その際に水晶体嚢の前面(前嚢)の一部と後方の部分(後嚢)は残します。なお粉砕された水晶体は、超音波乳化吸引装置によって吸引されます。そして濁った水晶体の代わりとなる眼内レンズを挿入して手術は終了します。なお切開部分に関しては、その切開口は小さいこともあって自然と塞がるようになるので縫合処置をする必要はありません。手術時間は個人差ありますが、平均的には10~20分程度と言われています。
眼内レンズについて
- 白内障手術では、濁った水晶体の代わりとなる眼内レンズを挿入していきます。その種類として、大きく単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズに分けられますが、当院では単焦点眼内レンズのみの取り扱いとなります(現時点)。そもそも人間の目というのは、近くでも遠くでも焦点(ピント)を合わせることができるわけですが、単焦点眼内レンズを使用する場合、どちらか一方にのみ合います。したがって、近方に焦点が合うレンズか遠方に焦点が合うレンズのどちらかを選択する必要があるので、白内障手術が決まった時点で挿入するレンズのタイプを決めておきます。また、ピントが合わない方の距離については、眼鏡による矯正(遠くを見る場合は凹レンズ、近くを見る場合は老眼鏡)が必要になります。
- なお、単焦点眼内レンズに関しては、どちらを選択したとしても健康保険が適用(多焦点眼内レンズは保険適用外)されますので、経済的負担は少なくて済みます。
手術の合併症について
- チン氏小帯断裂
- 眼内レンズは、水晶体を包んでいる薄い膜でできている袋の中に固定するので、膜の弱い方・支えるチン氏小帯が弱い方(100人に1人)には、術者の判断で眼内レンズの挿入を中止することがあります。
- 駆逐性出血
- 手術中に眼圧が下がることによる脈絡膜からの出血です。超音波白内障手術の導入以前は、駆逐性出血が原因で失明することがありましたが、超音波白内障手術の導入により頻度は下がり、駆逐性出血による失明もほとんどなくなりました。
- 感染症、眼内炎
- 手術後に眼の中に感染が起こる場合があり、その確率は非常に低く、2000件に1件起こるといわれています。感染を起こした場合、早期に治療をしないと失明する危険があります。